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COBOL技術者の憂鬱

COBOLプログラマは不在にしています

伊藤直也さんのトークセッション「私と技術書」

昨日、梅田のジュンク堂で開催されていたので参加してきました。
伊藤さんが普段どんな本をどんなふうに読まれているのかについて、とても興味があったのと、自分にも取り入れられることがなにかあればよいなと期待しつつ、お話を聴いてきました。



まずはじめに、「本を読む」ということについて、ご自身の原体験のお話をされていました。
高校受験の時期に学年最下位で落ちこぼれかけていた状態から、特定の参考書を何度も繰り返して勉強することで、克服していったという成功体験が、以後の読書を通じて学ぶ姿勢に大きな影響を与えているそうです。


その後の、ISP入社前後のお話からは、技術を独学で習得されようとして苦労されていた様子が伺えます。
この頃は、コードを書くことで世界を変えるようなことがしたいんだけれども、自分には技術力がないというもどかしさに苦しんでいたそうです。そこで高校時代の原体験が蘇ってきて、技術書を何度も繰り返して読むことで克服していくしかないと決意し、それを実践されました。すると徐々に、堅牢できれいなコードが書けるようになってきたということでした。
この頃読んだ技術書の中で、おすすめされていたのは、「はじめてのPerlプログラミング」「Javaによるデザインパターン入門」等でした。


さらに、shibuya.pmのコミニュティに関わり、憧れのハッカーである宮川達彦さんとの共著の出版、自社ではBlogサービスの立ち上げに携わるなど、順当に成長してこられたことがわかります。


はてなに転職されてからのお話では、大規模Webサービスの運用面で精神的に参っていた時期を話題にされていました。システムが夜泣きして、夜通し対処して朝帰りしたら、今度は朝泣きされるといった状態に陥ってしまい、付け焼き刃的な対処療法ではなく、根本的な原因を知って対応策を考えていく必要に迫られました。

ところがここからはWebアプリの世界とは違い、もっと下層レイヤの話になってくるので、新たに勉強する必要にかられました。そこでどんな本を読んできたのかのお話に入ります。

ここでは「LINUXカーネル」という本をおすすめされていました。
OSの動きがソースコードレベルで解説されていて、まさに自分の知りたかったことが書かれており、自分にとって足りない技術が何なのかについて把握することができたそうです。
また、「はじめて読む486」という本が、マルチタスクというものを実装レベルで理解する助けになったとのことでした。

このように、下層レイヤの知識を実装レベルで理解することにより、確実な根拠に基づいた負荷分散を行うことができるようになりました。これまでの対処療法と決別したことで、はてなスタッフにとって安心して眠れる夜が訪れることになります。


その後、伊藤さんの最近の興味の方向性についてお話されていたのですが、ここでは「科学」という言葉がキーワードになっていたので、少し不思議な感じがしました。
これはどういうことなのかというと、Webアプリから下層レイヤへ降りてきて、さらにその根底にある、コンピュータサイエンス的なものに興味が出てきたので、今後は「科学」をテーマにして勉強されていくということでした。
ここで紹介されていた「思考する機械 コンピュータ」という本は、気軽に読めてすごく面白そうな感じがすごくするので、私も読んでみようと思いました。


さて、まとめ的なお話としては、以下のようなことをおっしゃっていました。
本というものには二種類あって、それは「本質的な本」と「ハウツー的な本」であるということ。前者は、自分の成長と共に書籍も成長しているように感じられる本のことであり、同じ本であっても、自分の技術力が向上してから読むと、また違った切り口が見えてきて、新たな発見があったりするそうです。そういった意味で、技術とノウハウとは別物だということを明言されていました。その違いをわかった上で、何年経っても陳腐化しない確かな知識を身につけるべきであるとおっしゃっていました。


セッション終了後に質疑応答の時間があったのですが、ここで質問させていただきました。
私はよく書店で突発的に興味を持って技術書を買ったりすることがあるのですが、最後まで読めたことがあまりなく、ひどい場合は買っただけで安心してしまって一ページも読まないことがあるので、そんな私と伊藤さんとの違いは何なんでしょうか?という質問をしてみました。

すると、伊藤さん自身も積ん読はよくされていて、特に悪い事だとは思っていないそうです。
そのテーマに関心を持ち続ける限りは、じっくり読む機会はいずれやってくるのでその時に頑張ればよいとのことでした。
積ん読は罪ではないと言われて、ちょっと気が楽になりましたw
ありがとうございます。

その後ちらっとライフハック的なことを話されていたのですが、伊藤さんは自宅にテレビもPCも置いていないそうです。つまり本を読むしかない状態に自分を追い込んでいるらしいですね。
うーん、これはさすがにちょっと私には真似できそうにないですね…


さて、セッション全体を聴き終えた私の感想ですが、伊藤さんは天才的な才能を駆使してこれまですごいことをやってきたというわけではなく、地道に一歩一歩確実な技術を積み上げて、ここまで成果を挙げてこられたんだなということがよくわかり、すごく好感を持ちました。まだお若いのに、大勢の方々の前で、いつも堂々とお話されているのも、そういった地道な努力に培われた堅牢な自信に裏打ちされているからなのだなと思いました。

あとは、セッションの一番最後に「エンジニアとして、自分の生きた証をこの世に刻みたい」とおっしゃっていたのがよかったです。
これは30過ぎたあたりから、自分の仕事に対して真剣に取り組んでいるエンジニアなら必ず思うことなので、とても共感しました。

自分も今後やりたいことはたくさんあるのですが、それらを実現する為には技術が圧倒的に不足している状態なので、一生懸命勉強しているところです。
今回のトークセッションは非常に参考になり、また励みになりました。