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COBOL技術者の憂鬱

COBOLプログラマは不在にしています

おすすめのおっさん小説

最近読んだ小説の中でダントツによかったのが、村上龍の『55歳からのハローライフ』です。
 
おっさん&おばはんストーリーが5編収録されているんですが、もうほんとによかった。久しぶりに本読んで目から汗が出てしまいましたよ。
村上龍っていまだにずーっと、ちょっとアヤシイ感じのお話ばかり書き続けてはるんかなと思ってて、その独特の怪しさに昔飽きてしまって最近は全く読んでなかったんですけど、これはものすごくマトモでよいお話でした。
 
 
 
まずは冒頭の『結婚相談所』なんですが、これは、熟年離婚した奥様が新しい旦那様を求めて結婚相談所通いを始めて七転八倒するお話です。
いつまでたってもろくでもない男性としか知り合うことができないのですが、ある時ふと立ち寄ったホテルのバーで偶然知り合った若い男性とかけがえのない一夜のひとときを過ごすのです。ッキャ!
もうなんてありきたりなんでしょう。
でも、これがね、村上龍の文体で読まされると、かなりグッときてしまうんですよね。
 
あなた自身にも、終わってしまった恋愛にも、その涙にも価値がある、そう言いたかった。
哀れを誘うものではないし、恥ずかしいことでもない。
恥ずべきなのは、相手の人格や気持ちを無視して自分のことだけを考え、喋る人間たちだ。
今あなたは悲しくて苦しいかもしれないが、何も起こらない退屈な人生よりもはるかに豊かなときを生きている、そう思った。
だが、何も言えなかった。そんな言葉は、実際に口に出してはいけないのだ。
言葉にした瞬間、装飾され、嘘が混じる。
  
ここでいう「恥ずべき人間たち」側にいる我々に対して、龍はするどいナイフを突きつけてきます。
 
結局ラストで、離婚前の元の旦那さんとヨリを戻すのかと思いきや、そうはならないのがこのお話の面白いところです。
そこのところの理由も、うまーい感じで描かれていましたね。
 
 
 
他には、『ペットロス』もなかなかよかったです。
愛犬の病気をきっかけに、それまですれ違いばかりだった夫婦の心が徐々に通い合うようになっていくという、これまたありきたりなお話です。
ペットを起点にして家族の関係が深まるといったことは通常よくおこると思うのですが、このお話の中では、旦那さんが犬嫌いで、奥さんが逆に犬好きという設定になっていて、そこがちょっとしたアクセントになっているんですね。
ペットの死をきっかけにすることで、長年お互いに誤解しあっていたことに気づかされてゆくという流れが、自然な感じで描写されていきます。
 
こないだの探偵ナイトスクープの「奥さんと会話しない旦那さん」みたいな感じですかね。ああいうのは行為に現れてくるからわかりやすいんですけど、この夫婦みたいに、外面は仲よさげに見えるんだけども内情は…というのが実際多いのではないでしょうか。自戒をこめてイケダハヤトっと。
 
 
 
そしてトリの、『トラベルヘルパー』ですね。
これ、いつまでたってもタイトルの「トラベルヘルパー」が登場してこないので、いったいどうなっているのか心配になってきたんですが、もうほんとに最後の最後でタイトルの意味がわかるようになっていて、そこが非常にすばらしかったです。
なんかこう、もやもやしていたものが、最後キレイに一本の線になってつながってよかったねーみたいなカタルシスを味わうことができます。
 

ある光景が浮かんだ。どんなに振り払おうとしてもだめだった。

堀切綾子が微笑みを取り戻している。自分はその微笑みをずっと眺めている。そんなバカなことを考えてはいけない、と何度も自分に言い聞かせたが、まるで暗い海のひとすじの明かりのように、そのイメージは消えることがなかった。

 
 
 
世間はハルキハルキって騒いでますけど、今、自分の中ではリュウがアツいですね間違いなく。

 

 

55歳からのハローライフ

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